2006年01月12日

雪国

発行:新潮社

わぁ・・・素敵♪
 川端康成の代表的作品。きらりと舞い落ちる雪のような美しい描写と文体で切々とした恋愛模様を描いていく。

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」で始まるこの小説は描写がとても美しく、またよく読むとエロティック。高校生あたりで読んでも気がつかなかったものが、「ああ、そういうことをこの女性としちゃったのね」と妄想できるまでに成長しました。もう己の純な時代は過ぎ去ったと言うことでしょうか。女性心理の描き方が絶妙すぎて、男性としてはわかりづらかったりするところもあるかもしれません。でも女性なら微妙な期待とそれへの裏切りと愛情と先走りと勘違いから生まれてくる駒子の感情がわかるのではないでしょうか。男性なら急に甘えだしたり、すねたり、時には怒り出しちゃったりする女性の姿に混乱する方も少なからずいらっしゃるとは思います。現在ではホステスがこの微妙なやり取りで男性客を翻弄することがあるので気をつけてください。

 意外にも惚れやすい主人公の男性。主人公の視点が魅力的に人物を浮き立たせています。私なら節操なくがばっとやっちゃいそうなものが、結構じわじわ、つかず離れずやるのでストイックにも見えてきます。この微妙な距離感がまたたまらなく快感になってくるかもしれません。

 熱を感じるほどに近くなく、また冷えるほどに遠くない心理的距離が星にも似た雪の結晶の降り注ぐ世界で展開されていきます。また読みたくなる作品。

posted by ハヤブサ at 06:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

伊豆の踊子

 発行:新潮社

生々しい人間を描きつつも不可侵的な領域を作り上げる
 孤児根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に耐え切れないで伊豆の旅に出てきた青年が、旅芸人の踊子へと思いを募らせ、心を浄化させていく「伊豆の踊子」、温泉街で働き毒づきながらも力強く生きる女たちを描く「温泉街」、死んだ男性への恋慕と回想を美しい文体で切々と描く「抒情歌」、鳥という動物を通して人間を描いた「禽獣」の四本の短篇集。巻末には三島由紀夫が文を寄せている。

 川端康成をふと読みたくなって、数年前に読んだものを改めて読み返してみました。本とは不思議なもので年をとるとまた違った風に感じられてきます。

 人は自分の感情によって他人に対する見方がころころと変わります。いらだっている時に人を見るときと、非常におおらかな時に人を見るときでは、また違った印象があるのではないでしょうか。

 川端作品には、とても毒気があるように思えます。それは「人の醜さに対する毒気」であり、「死」に対する極限的な見方であり、その毒気が綺麗な文によって包み隠されているので気がつかないでいたのだと思います。


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posted by ハヤブサ at 06:05| Comment(12) | TrackBack(6) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月22日

ベター・ハーフ

発行:集英社

THE 夫婦生活!
結婚、妊娠、出産を経て、人生における夫婦の諸問題をリアルに浮き彫りにした傑作。リストラ、不倫、介護、お子様受験などなど、夫婦なら誰しも一度は感じたことのある夫婦模様をそれぞれの理想と現実をギャップにして浮きたたせている。

恐らく夫婦ならこの小説を切実に受け止めると思います。それは、売れたことからもわかります。私は結婚はしていないのですが、個人的には嫌な話だったかなと。小説の評価としては夫婦間の実情をこれでもかというほどに描写している点は非常に優れているので高評価ではあります。でもこういう結婚する前にこういう本読んじゃうとどうしても結婚に抵抗感が出てきちゃうのが自分の気持ち。最初は小説の中みたいにラブラブで喜んでいてもだんだん現実がうざったくなってきて、夢のようだった恋人時代のことを懐かしく思うのかななんて考えると思わず震えちゃう。そうなると「ああ、結婚ってなんだろうなぁ・・・嫌だね」って思えてくる。

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posted by ハヤブサ at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月20日

新装版 松翁論語

発行:PHP研究遜

もうオーラ本指定!
え〜、殿堂入りです。現在のPanasonic、松下電器産業続式会社の創業者松下幸之助の語録を論語風に938にまとめたものですが、内容は多岐に渡り、経営、国家、個人、そして地球規模にて語られます。経営者としてのみならず、人としてどうあるべきか、己を高めるためにはどうあるべきか、人として他者と・していくにはどうあるべきか、人の上に立たなければならない人間はどうあるべきか、企業は、お金とはどうあるべきかが克明に記されています。巻末には索引もあって、単語単属で調べることも可能です。

これ、暗記して人生訓にしたら恐ろしいほどの人間ができあがるのでは?世界を背負えます。
  
ぜひ、一読をお勧めいたします。

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posted by ハヤブサ at 19:18| Comment(0) | TrackBack(2) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月06日

血と骨



たけし炸裂!
在日朝鮮人を巡る話なのだが、少しだけプロレスラーの前田日明の話を聞いたことがあるが、相当苦労しないといけなかったらしい。そういう苦労は私なんぞでは量り知ることができないが、全編にわたる暴力と性と金への欲求は、抑圧されていた過去があるからなのか、それともそれが本来の姿なのかわからない。
焦点は作者の梁石日よりも父親のたけしで、青年時代の背景がないので映画からは父親の背景は推測しづらい。
それにしてもたけしが壊す壊す。家壊す、人壊すわで本当、見ていると暴力やグロテスクな映像に抵抗がある人は荒んでいるような映像に二時間もつき合わされちゃって疲れちゃうという感じがするかもしれない。セックス、レイプシーンも多い。
今の社会で強制労働や家庭内暴力やレイプなんて受け付けないのでは・・・と思ったけれど、これ、もしかしたら荒んだ現代人の姿にも似ているかも。介護の問題なども絡めて、昭和の時代の映画は在日朝鮮人というよりも、むしろ現代への風刺のようにも見えてくる。途中で「悪い血が流れているかも」と姉が言うシーンがあり、さらに「だんだん親父に似てきた」なんて言われる場面があって、何かしら悪いにしろ、いいにしろ、受け継がれていくものなのかもしれないと思っている。
ちなみに自分も父親に気持ち悪いほど似てきて、嫌な思いをしているし、はっとすることがある。どこかで嫌っていた父親に知らず知らずの間に似てきていた自分には他人から指摘されても認めたくないものだが、作者の梁石日もどこか自分が愚かしい道を歩んだのではないかと回顧した部分もあったろうに推測する。

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posted by ハヤブサ at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

花と蛇2 パリ / 静子



スタッフの勝利!
いきなり2から見たわけですが、団鬼六の世界を見事に映像美で表現しています。これはスタッフやキャストにお見事ですと言いたい。インモラルな世界はアンダーグラウンドに陥りがちだけれど、カメラワークの揺らぐような見事さや画面への臨場感、フランス、パリと言う文化の色彩感を充分表していて、それでいてエロティックな要素は充分引き出されている。局部はもちろんAVとは違うので腰布や強い光などで隠してあるが、ちょっとだけボロがあるとすれば、女性器を調べるシーンなのに光の照射がずれて腰布がついているのがばればれなのはいただけなかった。そんな細かいことはどうでもいいかもしれないが、ぜひ団鬼六作品から入っていただきたいと思う。彼の官能小説は他のエロ作家と一線を画している。体を舐めるような描写と微細に変化していく心理描写の見事さと言えばそれはもう超一流。現在に見られるエンターテイメント作家の文章とは重みが違う。今まで官能小説という分野を多少甘く見ていた私もあれには打ちのめされました。

しかし杉本彩にあれだけの演技力があるとは思わなかった。ただのタレントのような見方をしていたし、今回映像スタッフの努力による多少の割り増しはあれども、あの目の動きや顔の表情は本物です。

年の離れたご主人(宍戸錠)が中年後期に差し掛かる性の問題にも触れていて、その切なさも多少涙を誘った。杉本彩の体が物凄くよくて彼女の体だけでも見ごたえがある。団鬼六と言えば知らない方もいらっしゃるのではないかと今思ったのだが、SM小説の第一人者である。今回は(今回も?)ロープで縛ってのセックスシーンがあるが、それほどきつくなく全体としてのまとまりが高いと思う。18禁と言えば内容は予想しての通りだから見たくない人は見ないほうがいいが、これは作品としての完成度は結構高い。個人的には高評価。
posted by ハヤブサ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メノット



写真集のような映画
近畿地方なまりがある二人の姉妹(藤本彩、国分佐智子)が山荘へ訪れているもう二人の男を交えながら妖艶な世界を描こうとしている。実際のヌードはセミヌードっぽく、藤本彩のみだったが、生と死と因果を交えながらモノクロームのような世界や対照的に色彩鮮やかな世界などを交互に置き、色やシーンを艶やかにしている。
画面ひとつひとつが写真集の一ページのように綺麗なのだが、肝心のシナリオがどうにも甘く感じられた。
メノットとは「手錠」の意味らしいのだが、肝心のこの主題への因果が今ひとつはっきりしないので、せっかくの主題や小道具の「手錠」が浮き出てこないように感じられた。
演技のことについてはあまり触れないが「うまい!」と絶賛できるほどではなく、そこらへんが少しだけしらける要因になるかもしれない。
映画の中での内容描写が今ひとつ突っ込みきれていないので、エロスに走りたいのか、SMチックな心理描写に走りたいのか、終わってみればどうにもぼやけた感じがして全体的にまとまりにかける内容だとは思った。
正直に言って買うほどの内容ではないが、映像が綺麗なので借りてみてもそれほど損はしない内容かもしれない。褒めるべき点があるとすれば、国分佐智子さんがとっても綺麗でしたって、ちょっとタイプだったのでメロメロ。いわゆる妖女的存在の彼女。でも彼女はあまり露出シーンがなく上半身脱ぎはしますけど乳は隠します。はい。
posted by ハヤブサ at 22:34| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月19日

TAKESHI’S

公式サイトはこちら

今さらながら見てきましたよ。
感想はと言うと、驚いた・・・本当に驚いた。
北野武という人間の深層心理そのものが映画の中で展開されています。
映画を見ながら背筋のあたりがゾクゾクしたのは、監督の「記憶」と「夢」への集中力の高さと、己の深層心理を自ら暴露させるほどの覚悟に圧倒されてしまったのです。
普通、そこまでやっちゃったら「死ぬ覚悟」なんてもうできてるんじゃないのかなとも感じてしまいました。

「もうおいらには隠すものなんてないぞ」

というすさまじさまで感じさせる。
現実と虚構がすさまじく入り乱れているけれど、一言で言うとこの映画は「夢」ですね。
監督本人は「実物像とは違う」とコメントしているけれど、映画の中で象徴的なセリフやシーンが出てきて、今までの「北野武の人生」をどこか思い起こさせます。

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posted by ハヤブサ at 18:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月17日

「なぜか人に好かれる人」の共通点

発行:PHP文庫

人に好かれるための本ではありません
人に好かれるための本ではありませんが、好かれる人の共通点を書いた本であります。これはここに書いたことを実行せよと言うことではなく、自分を客観視するためにおおいに役に立つ本です。
自分のどこが悪いのか、いい部分はどこなのか、それが見えてくれば悪いところは改善し、よいところは伸ばせるはずです。つまり、この本はよい自己改善本になるはずです。悪い例も書いてあるので、自分が良かれと思っていたのにどうして敬遠されるんだろうと思っている人はこの本の中にヒントが隠されているかもしれません。とってもわかりやすく書かれているので、一日一項目ずつ読んでひとつずつ心に刻んでいくのもよいかもしれません。
優しく語り掛けてくるような文体が柔らかさを感じさせてくれます。
posted by ハヤブサ at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

青空チェリー

発行:新潮文庫

あ、いいなぁ
「女による女のためのR−18文学賞」で、読者賞を受賞した「青空チェリー」他、戦時下という設定が舞台の「ハニィ、空が灼けているよ」と青春の思い出を拭い去れない男が主人公の「誓いじゃないけど僕は思った」の短篇三つが収録されている。
年が似たようなせいなのか、それとも彼女の魅力なのか、文章がとてもすらすらと入ってきて、共感できる部分が多かった。きっとこの年代が考え、思っていくことはどこか似通っているのかもしれない。素直に、「あ、いいなぁ」と思った。


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posted by ハヤブサ at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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