2005年07月21日

ナチュラル

発行:幻冬舎

最も自然なもの
 まるで箱庭劇のように話は進む。一人の女性を中心として二人の男性との性の繋がりと三角関係とを通してそれぞれの心情を浮き彫りにしていく。
 いわゆる不倫だったりと大人の事情が垣間見えるが、むしろ主人公はそんな事気にしていない。刹那的よりもむしろ温かみを求めて居心地のよさだけを感じているようにも思える。
 最も自然な男女の繋がりはなんなのだろうか。私にははっきりとは断言できないが、ここでは性での繋がりを強調している。すでに妻子のいる彼氏に比べ「俺の子供を産め」という浮気相手が対照的だ。主人公のセリフがことごとく主人公を照らし出しているのが大変皮肉だった。
 理性的なものよりももっと本能的なのが身体だ。体が性を覚えていてそこから感情が揺れ動く。脳よりも体が条件反射で動く。最初に犬のことがでるが、まさにこの主人公は躾された犬を象徴するかのようだった。誰かの「ナチュラル」に従うこと。己の「ナチュラル」に従うこと。求めるものと与えるものが一致すれば互いに離れられなくなる。それは自然に起こってしまうことのように思える。一方の関係では秘密を守り、一方の関係でもどうどうとしつつも彼の家庭へは踏み込めない。ここでも秘密を抱えている。三人ともずるい関係を続けていくのだが、セックスの味を強烈に覚えた関係というのは、私は普通の恋愛よりももっと特殊に繋がっていくように思える。それはやはり理屈を越えた本能の問題なのだ。本能に近いということは最も生物的な人間に近い。自然な状態であるということだ。
「恥ずかしさは必要なのよ。何をして生きていくにしろ」

 性が生だとすれば、主人公は何を求めたのだろう。ただ、主人公は今の関係が壊れることを恐れていた。全身が余さずに満たされる快感にひたっていたかったのか、穏やかな水に浮いているような気持ちになれるのが好きなのか。どことなく寂しさを覚える不思議な作品だと思った。
posted by ハヤブサ at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。