2006年02月13日

街は眠らず動き続けます。
それでも、朝日が昇る少し前、多くの人々が目覚める少し前、新聞を配達する人の目覚ましは鳴ります。
新聞配達員が、寝ぼけながら目をこすり、冬の朝の寒さに凍えながら着替え、配達所から新聞を各家庭に配る頃、お母さんは一人起きだして野菜を切り、炊き上がったご飯をもって、ガスをつけ、玉子を割り、フライパンの中で味付けをしながら、少しだけレトルトで手抜きをして、お弁当と朝ごはんの支度をします。
新聞配達員が、いつものルートを回る頃、少しだけ朝日が見えて一気に空が明るみだします。
いつもの同じルートでは、おじいさんが早起きして庭でラジオ体操をしています。
新聞配達員はおじいさんに挨拶をします。
「おはようございます。新聞です」
新聞配達員のいつもの元気そうな顔を見るとおじいさんはにっこりと挨拶をします。
「いつもありがとう」
新聞配達員はおじいさんの「ありがとう」の言葉にいつも心が和みます。
配達員の新聞が残り少なくなった頃、お母さんのお弁当はみっつ、できあがって、朝ごはんのしたくも終わりました。
お母さんは子どもとお父さんを起こしに行きます。
子どもが口をあんぐり開けて、布団を蹴飛ばして、パジャマから少し腰おなかを出して幸せそうな夢を見ているとき、お母さんは声をかけます。
「早く起きないと学校に遅れるよ」
お母さんはお父さんも起こしに行きます。
昨日の接待で飲み続けで部屋の中には少しお酒の臭いが残っています。
それでも、布団を蹴飛ばして、パジャマから少しおなかを出して、口をあんぐりあけています。
まるで子どもを二人起こすみたいな気持ちになります。
「お父さん、朝ですよ。会社に遅刻しますよ」
小さな子どもと大きな子どもは起こさなければ遅刻してしまいます。
お母さんはお父さんの二日酔いを気遣って朝からコーヒーではなくホットミルクにほんの少々コーヒーを入れたコーヒー牛乳を作ってあげます。
ふやけた声で「おはよう」と目をこすりながら二人は起きてきます。
朝の支度をして、三人が開かれたカーテンからさんさんと降り注ぐ太陽の光を浴びながら「いただきます」を言う頃、おじいさんは仏壇のおばあさんに水とご飯と少々の漬物を備えて手を合わせます。
「おはよう。ありがとう」
そう心の中で自然と言いながら。
おじいさんがてを合わせ終えて、一人でご飯を食べようとしている頃、一人暮らしの大学生はようやく目覚ましでだるそうに起きだします。
昨日友だちと夜まで遅くはしゃいでいた大学生は、実家から送られてきた小包をそのままにしておいていました。
食料がないから米を送ってくれと催促したら送ってきた小包です。
きっとお米やらなにやら入っているのだろうと思って、朝ごはんの支度をしようと小包を開けてみると、お米のほかに手紙が添えてありました。
手紙の中は少ない文字で、母のしっかりした文字で二行だけ書かれていました。

 元気でいてくれることが一番の安心です。
 疲れたらいつでも帰ってきていいからね。

いつも母親をそっけなく扱っていた大学生は、母親のあたたかく書かれた文字の柔らかさと、その言葉に思わず胸を詰まらせました。
「今日は、実家に電話でもしようかな」
大学生はそう呟いてカーテンを開けると眩しい光が部屋と大学生を包み込みます。
その頃大学生の両親は食卓でゆっくりとご飯を食べていました。
テレビを見ながらご飯を食べるお父さんは、静かにご飯を食べるお母さんをちらりと見て、テレビのほうを見直して聞きます。
「おい」
視線を向けずにご飯を食べるお母さんは「なんですか」と言います。
「送った米、ちゃんと届いたんだろうな」
お母さんは、ふわりと口元に笑みを浮かべてご飯茶碗を持ったままお父さんを見ます。
「大丈夫ですよ」
「そうか」
お父さんはテレビから目を離さずにご飯を食べ続けます。
それがシャイなお父さんの必死の照れ隠しだと思うとお母さんの心は朗らかになってきます。
お父さんがテレビを見ながら息子のことで安心しきっている頃、新聞配達員は仕事を終えて家路についていました。
配達員が家について一人でご飯を食べていると携帯が鳴り出してメールが届きました。

 おはよう。
 今度の土曜のデート、いいよ。

配達員はメールを見て飛び上がって喜びます。
配達員がメールで舞い上がっている頃、お弁当を持ったお父さんと子どもは先に家を出ます。
「いってきます」
大学生の父親も、仕事に出かけます。
「いってくる」
玄関から光があふれ出て、人は朝を感じます。
お父さんは子どもの手を握って歩きます。
新聞配達員は余裕を持って学校へ行きます。
大学生はのんびりしすぎて、急いで玄関を出ます。
おじいさんは今年も山登りを続けるためにジョギングをしだします。
ジョギングの先々で自分よりも若い人がひいひい言いながら走っているのを見ます。
(山で足手まといには絶対にならない)
おじいさんは強く思いながら謙虚な気持ちで走り続けます。
道行くジョギング仲間に挨拶をします。
「おはようございます。いい朝ですね」
みんな微笑みながら挨拶を交わします。
大学生の母親は家事を済ませた後は、花と社交ダンスのサークルに行くスケジュールが入っています。
お母さんはデザイナーで、お弁当を持って洋裁の仕事に出かけます。
ファッションショーまでに衣装をそろえなければなりません。
朝の街は忙しく動き始めます。
小さな夢も、努力も、微笑みも、朝の挨拶から始まります。
「おはようございます」
なんでもない挨拶が、毎日のあたたかみを運びます。
そのあたたかみの傍らで、植物たちは人を見守り生きています。
朝です。
朝の、光です。
あたたかい朝の、「おはようございます」
posted by ハヤブサ at 03:29| Comment(0) | TrackBack(1) | お話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/13214005

この記事へのトラックバック

米・雑穀
Excerpt: Blink Link 役立つリンク集に食品・スイーツのページができました。米、無洗米、外国産米、玄米、雑穀、もち米、シリアル、お粥、おこわ、寿司、赤飯、餅、麦、米加工品など米・雑穀が満載です。ご利用く..
Weblog: Blink Link 役立つリンク集
Tracked: 2006-04-30 11:44
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。