2006年01月24日

生きるのがつらい。 「一億総うつ時代」の心理学

発行:平凡社新書

あなたもまわりもうつ防止
 自分や他人を追い込まないためにも役立つうつのための思考法。

 一億総うつ時代のためのうつの人への思考法。反ポジティブ思考法で、自己・他者受容しようというのがこの本。具体的な方法もまとめられているのでかなり役に立つ。がんばりすぎてしまったり、どうしても「〜しなければならない」という強迫観念が抜けない方、気がつかない間にうつになってしまう人などの危険性を、社会的な環境からも指摘している。また身近な人に対しての救助方法、うつにならないための予防策も記されているので、うつではない人にも充分役に立つ本と言える。

 出だしはちょっと暗く、苦しみを受け入れようとするのは、どうにも気が重くなるような気がしたのだが、最後まで読むとそうでもない。ちゃんと、どのようにすれば救われるかも書いてある。うつになる要因は様々ある。中にはニートが先行き不安からニートに甘んじるとも書いてある。それはニートであるまいと似たような状況にさらされる。多くの人が先 行き不安を感じている。人生そのものにやりがいを感じているのではなくて、何かに振り回されていたり、また振り回される前にすでに意気消沈しているような姿がこの本には書かれている。

私はいつも思うのだが、よく人の話しを聞かずに否定する人がいる。聞いていても結局否定する人がいる。問題は、否定して物事が改善するのならとうの昔に改善されていっているはずだ。物事が改善せず、悪い方向へと向かうのは、残念ながら悪いことをやっているということだ。

十歳の時にする恋と、三十歳の時にする恋は、感じ方も考え方も同じだろうか。真剣に恋をした人はわかるだろうし、恋でなくとも真剣に悩んで苦労した人はわかるだろうが、今より若かった頃、今から見ればなんと幼稚なことで悩んでいたのかと思うだろうが、その当時はいっぱいいっぱいだったはずだ。このように人の苦しみは、現在の自分をもって推し量ることはできないということだ。たとえ「未来にあなたは不幸になる」という自分の経験から出た意見でもって相手を叱責したとしても、余裕のない状態は、文字通り受け入れる状態ではないのだから、逆に苦しめるだけだと思う。相手にとっては「無理な要求」にしか聞こえないし、その意見は、相手の心の中から出る本音を封じてしまう。辛い状況から出てくる本音は「わがまま」なのだろうか。普通の人にとっては「わがまま」に聞こえても、本人にとっては死を目前にした必死の訴えかもしれない。そういうシグナルに誰かが気がつかなければならない。

時代が変われば価値観も変わる。守らなければならないものがあったとしても、必ずしも守れるとは限らない時代になってきている。特に若い人たちは、上から与えられる価値観に違和感を覚えることも多々あるのではないだろうか。だからと言って、本当に大事なものは決して教えることを止めてはいけない。それは大人の責任だ。お互いの価値観でもって相手の話を聞かなければ、ずっと平行線のままだし、子どものまま育ってしまう。私は、心には成長過程があって、ビルやその他の建築物がいきなり宙に浮いて十階から建てられないように、心もいきなり「大人になる」ことはできないと思う。誰かの話を聞く姿勢が、忙しさやストレスや先入観から欠けてきているのではないかと感じている。

「心の風邪」と言えるようなうつではなく、「心の大病」となったうつになってしまうと、あらゆる自己制御ができなくなる。この本の中では論理療法のようなセルフカウンセリング方法で、悩みの本質に迫る具体的な例をいくつかあげている。これはうつではなくとも、悩みの初期状態にとても効果のある方法だ。なにがあって、どう思って、どうしてそう思って、自分の価値観への反論、次の行動、という風なプロセスである。それを紙に書いて客観的に見る方法だ。そしてこの本の最大の特徴は「悩みを克服するのではなく、悩みと共存しましょう」ということだ。

そのままの自分が認められず、多くのジレンマに苦しんでしまうのは、自分を否定する存在が周囲や自分の中にあるからだ。自分の憧れから自分をつぶしてしまう人もいる。今や様々な価値観に振り回され、そしてその理想によって自分を見失って自分を認められない状態の人もたくさんいると思う。というより、自分がそうだった。それはとても苦しいことだ。

この本の終盤は、ほとんどが自他へのコミュニケーション方法が記されている。身近な人を守るために、自分を守るために、どのようにしていくべきか、それを知っていればある程度は防げることだと思う。それ以上のことは専門化の領域だ。精神科へ行くことを何も恥じることはないし、周囲も理解をしてく努力をすべきだと思う。ぜひ、一読をお勧めしたい。
posted by ハヤブサ at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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